遺言の撤回についてのご相談です。

 

認知症の父がいます。私は父とは不仲であったため父がまだ元気なときに「財産は私の弟に相続させる遺言を書いた」と聞いていました。一昨年父が体調を崩し入院したときに「遺言の内容は無視して財産は兄弟で仲良く分けなさい」と弟と一緒に見舞いに行った病室で父から直接聞きました。

先日、弟が私に「遺言の内容は俺に財産の全てを譲るとある。父が他界したときにはその内容に従ってもらう」と言われ困っているのですが、口頭での遺言の撤回は遺言を撤回したことにならないのでしょうか?

 

遺言の撤回・内容の変更についてのご相談は多く、その関心の高さがうかがえます。

 

遺言はいつでも撤回・変更が可能です。

 

もっとも、その方法については決まりがあり、単に口頭で撤回するだけでは足りず、遺言を撤回する遺言を再度作成する必要があります。

今回の相談のように、新たな遺言を作成する必要があることを知らず、口頭で撤回したようなケースでは、残念ながら遺言者の意思が実現できないだけでなく、遺産を巡るトラブルとなってしまうこともあります。

 

遺言内容の変更

 

前の遺言と後に書いた遺言の内容が抵触する場合。この場合には遺言者が明らかに先の遺言を撤回する趣旨であったと認められ、遺言撤回の効力が認められます。

 

例えば、前に作った遺言では「財産は全て長男に相続させる」とあったのに、後に作った遺言では「財産は全て次男に相続させる」とある場合には、前の遺言は撤回するなどと書かれていなくても、矛盾している点については、後に作成した遺言により前の遺言は撤回したとみなされます。

 

しかしながら、トラブルを回避する意味ではやはり、正式に遺言撤回の遺言を作成することです。

 

遺言者の意思を現実にするため、トラブルを避けるために残した遺言が原因で遺産トラブルに陥るケースも多々あります。

 

気掛かりなことがあれば、まずは専門家に相談することをおすすめします。