被相続人がなくなった際、遺言書がある場合は基本的にはそこに書かれている通りに相続財産をわける事になります。では遺言書がなかった時はどうするのか?
その場合には遺産分割協議を行う事になります。
遺産分割協議
上述したように、遺言書がない場合はどのようにして相続財産を分けるのかを相続人同士で話し合います。そして話し合った結果を書類として残しておきます。
仮に遺言書があったとしても、その内容が「全部の財産の3分の1を誰々に、残りを誰々に」などといった大まかな割合しか記載されていないような場合は、預貯金や不動産などをどうやってその配分通りに分けるか、やはり話し合いで決める必要がでてきます。
この相続財産を分けることを「遺産分割」と呼び、どのように分けるかの話し合いを「遺産分割協議」、話し合いによって出た結論を書類にまとめた物を「遺産分割協議書」と呼びます。
遺産分割協議書は必ずしも作成しなければならないものではありませんが、せっかく話し合った内容を後からひっくり返されたりしないように、できる限り作っておくほうが望ましいです。
遺産分割協議の決まり事
遺産分割協議には、どこか特定の場所に相続人全員が集まって行わなければならないとか、相続が開始した時からいつまでの間におこなわなければならないといったルールはありません。
話し合いの場所や期限は自由
遠隔地にいる相続人同士、電話で話して決めていってもいいですし、全く別々に話し合って内容をまとめた遺産分割協議書について一人一人同意を求めていくといった方法でも大丈夫です。
あまり揉め事のないような遺産分割協議の場合は、出来上がった遺産分割協議書を順繰りに郵送で送り、署名捺印をしてもらってまわるという方法がとられる事もあります。
また、遺産分割協議が相続が開始してから何年も経ってようやくまとまるというようなケースもあります。遺産分割協議に時間がかかることはよくある事であり、期限は特に定めてられてはいません。
ただし、相続税の申告は亡くなってから10ヶ月以内という期限がありますので、相続税が発生するような場合は注意が必要です。
全員の同意が必要
遺産分割協議は、相続人全員の同意があってはじめて成り立ちます。多数決で決定することはできません。相続人のうち一人でも反対する人がいた場合は、いつまでも遺産分割協議が成立しない事になります。
これは一見不便に思える反面、もし自分の意にそぐわない不公平な分割案が出されても、数で押し負けてその案が通ってしまうということを防ぐことが可能です。
ただどうしても相続人の一人が同意せず、ずっとまとまらない場合には調停などの裁判所の手続きを利用して遺産分割を進めていくというケースもあります。
分割の種類
相続財産の分け方については、特に決まりなどはありません。相続人間の話し合いで自由に決めて構わないです。
ただ例えば遺産が現金だけであれば協議で決めた割合通りに分割すれば済む話ですが、土地建物など物理的に分割するのが難しい物(共有名義という方法もありますが)についてはなかなかそういうわけにはいかないでしょう。
そんな場合にはいくつかの分割方法があります。
現物分割
例えば持ち家は妻に、株や貯金は息子に、アパートは娘に、といったように1つ1つの物件をそれぞれ一人ずつに割り当てていく分割の仕方です。
見た目がわかりやすく、ひとつの財産を細かく分類せずそのままの形で残せます。
ただしこれはかなり大ざっぱに分けていく事になりますので、それぞれの財産の同士の価値が同じではない時や、もっと細かく分割しなければならない時などは難しい場合もあります。
代償分割
土地建物を長男が相続するかわりに、弟たちには長男が法定相続分に見合ったお金を支払うといったような方法です。誰か一人が大きな財産を相続する代わりに、他の相続人にはお金を支払って公平さを補填するやり方となります。
これにより財産をそのままの形で残しつつ公平な分割が可能になります。
この手段も利用される事が多いですが、大きな財産を相続した人がその他の相続人に対して支払えるだけのお金を持っている必要がある、という条件があり状況によっては難しい場合もあります。
換価分割
例えば不動産など、そのまま売却してしまい分割可能な現金に換えてから相続人間で分割する方法です。お金になってしまいますので分割も簡単で公平に分配する事が可能です。
ただ必然的にその不動産などの物件を手放す事になります。どうしても自分たちの手元に残しておきたいときはこの分割方法は使えません。
共有分割
土地や建物などを持ち分何分のいくらを長男、持ち分何分のいくらを次男、などといったように共有名義で登記し、1つの財産を複数の相続人で共有する方法です。
土地建物の持ち分は柔軟に登記できますので数字の上では公平に分割することができます。
また不動産だけでなく車なども複数人の共有名義にすることができます。
ただ共有名義になった不動産等は、その後の処分や管理方法などが非常に複雑なものになってきますので、できればあまりお勧めしないやり方となります。