相続が開始したとき、まずは一体誰が相続人になるのか確定させておくことが重要です。
遺言書がない場合は相続人の間で遺産分割の協議を行い、その後、被相続人名義の財産を相続人の名義に変更する手続きを行うことになります。この協議(話合い)は相続人全員でしなければなりません。
つまり、そもそも誰が相続人になるのか判明していなければ遺産分割の話し合いを開始することも出来ないのです。もし本来の相続人全員が揃っていない状態で話し合いを進めると仮に協議がまとまったとしても後からそれはひっくり返されてしまいます。
ちゃんと正しい方法で相続人の調査と確定を行う事は、今後のあらゆる手続きを行うための第1歩となるのです。
相続人調査の基本は戸籍謄本集め
亡くなられた人の相続人が一体誰なのかを確認するには戸籍を収集して調査を行います。親族や親戚が誰なのかというのは身内でわかっていることなので、わざわざ戸籍を見なくても大丈夫と思うかもしれませんが、必ず戸籍類の取り寄せは必要になります。
その理由の一つとして、身内や申請以外の人に「この人が相続人です」と説明する際に公的な資料が必要となるからです。例えば銀行での相続財産の口座の名義変更、例えば法務局でおける相続した不動産の名義変更、それ以外にもほとんどの役所や証券会社などの必要書類として相続に関わる戸籍類の提出が求められます。
全くの第三者である役所や金融機関からすると、相続人だから名義を変えてくれ、口座を解約してくれ、といわれてもやはりそれを証明する物をもらわなければ勝手に手続きをするわけにはいきません。
その為、こういった書類の提出を求められる訳です。
さらにもう一つの理由として、家族に話していなかった隠し子がいる場合など、戸籍謄本を見て初めてわかる事もあります。亡くなられた人が男性とした時、配偶者以外の相手との間に子供ができた場合、認知をすれば戸籍に記載されます。そして非嫡出子という扱いにはなりますが、その子供にも相続を受ける権利があります。
逆にいえば、本当に隠し子がいたとしても認知をせず戸籍に記載されていなければ、基本的にその子には法律上、相続する権利はありません。そんなによくある話ではありませんが、まれに亡くなられてから戸籍謄本を見て、はじめて別に子供がいたことがわかるケースも存在します。
またそんな特殊な場合とは別に、現在の配偶者と結婚する前に別の相手と結婚をしていたようなケースもあります。この時も以前の家族に子供がいれば、その子供達も相続人となります。
生前あまりそういった込み入った話をしていなくても、亡くなられた人の戸籍をたどっていけば他に相続人がいるのかどうか全てわかるようになっています。
ですので、戸籍類を集め相続人を確定させるという作業は必ず行っておかなければなりません。
相続人調査で必要な戸籍の種類
先ほどから「戸籍類」といった感じにまとめた書き方をしていますが、一口に戸籍といってもいくつか種類があります。
相続人調査の際に目にする戸籍はだいたい以下の3種類。
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(現在)戸籍
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除籍
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改正原戸籍
これ以外に「謄本」「抄本」といった区別がありますが、謄本とはその戸籍に掲載されている人全員の情報が記載されたもの、抄本とはその戸籍に掲載されている人のうち一部の人の情報だけが記載されているものです。
相続関係で戸籍類を集める場合、通常では謄本を請求することがほとんどで抄本を請求する場面はあまりありません。
そして一般的な相続であれば、必ず必要となるのは以下の2種類の戸籍謄本です。
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被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
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相続人全員の現在の戸籍謄本
被相続人の戸籍収集は、死亡した時点から出発して順に辿り、出生まで溯っていくという方法で行われることが一般的です。引っ越しなどで本籍地が移転しているような場合も、その時点の戸籍を見れば以前にどこから転籍してきたのかわかりますので、それを辿りながら前の本籍地、さらにその前と追いかけていきます。
ただ戸籍は、法律の改正やコンピュータ化による仕様の変更などによって何度か改製されることがあります。記載されていたけれど結婚などでその戸籍を抜けていった人の名前は、改製されたタイミングで戸籍には記載されなくなってしまいます。
この場合は、改製前の戸籍も入手しなければなりません。なおこういった改製される前の戸籍を改正原戸籍と呼びます。
これら戸籍の種類の違いに注意しつつ、必要な戸籍謄本を全て集め相続人を確定させます。
戸籍が集まれば相続関係説明図を作成
必要な戸籍謄本が集まれば相続関係説明図図を作成します。
これは相続人の関係を図にしたもので、絶対に作成しなければいけないものではありませんが作成することにより相続人の関係や内容を把握しやすくなり、整理もできるので調査の漏れなどをなくすことができます。
また、この相続関係説明図を作成しておくと金融機関やその他第三者に相続人の状況を説明するときにわかりやすくなります。そして不動産の名義変更などで法務局で手続きを行う際、この説明図を添付すれば戸籍の原本を還付してもらうことが可能となります。
いろいろとメリットがありますので、法的に絶対必要なものではないものの、士業が相続業務に携わる場合には、必ず作成されます。